建設廃棄物の中でも、産業廃棄物については、その処理を委託する場合、元請業者は委託業者と契約書を締結する法的義務があります。
この委託契約書は、記載が必要な項目が法律で決められており、正しい知識のもとに作成する事が求められます。
本記事では、契約書を作成したことが無い人でも、正しい委託契約書を作成できるよう、作成時のポイントを詳しく紹介していきます。
本記事のポイント
・産業廃棄物の処理委託に契約書締結は必須
・元請(排出事業者)と処理業者が個別で締結
・契約書に記載が必要な事項は法律で明記
目次
建設廃棄物の処理方法について
建設廃棄物は、建設工事によって排出される廃棄物の事を指し、そのほとんどが産業廃棄物で構成されます。
またこの建設廃棄物の処理責任は元請業者にあります。
処理責任を負う元請業者が、工事によって出る産業廃棄物を処理する手段は2つあり、1つは全て自社で埋立処分まで行う「自己処理」で、もう1つは処理を専門業者に委託する「委託処理」です。
産業廃棄物の処理には設備や知識、ノウハウが必要なため、実態としてはほぼ全ての元請業者が、「委託処理」により産業廃棄物を処理しています。
処理を委託する場合は委託契約書の締結が必須
産業廃棄物を「委託処理」する場合、排出事業者と処理業者の間で、委託契約書の締結が義務付けられています。
その為、もし建設工事で出た産業廃棄物を、元請業者が下請けや処分業者にその運搬や処分を委託する場合は、元請はそれぞれの業者と委託契約書を個別に締結しなくてはなりません。
例えば現場で出た廃棄物を、現場で作業する下請けA社に処分場Bまで運搬してもらう場合、A社とは運搬に関する委託契約書を、処分場Bとは処分に関する委託契約書をそれぞれ交わす必要があります。
委託契約書の必須記載項目について
では、元請業者は委託契約書を作成する際、どのような点に注意して作成すれば良いのでしょうか?
実はこの産業廃棄物の委託契約書は、契約者の中に記載しなければならない項目が法律で決められています。
以下の表で、運搬と処分それぞれの委託契約書中に記載が必要な項目をまとめました。
※必須項目にそれぞれ〇をしています
記号 | 必要な記載事項 | 運搬 | 処分 |
---|---|---|---|
1 | 産業廃棄物の種類と数量 | 〇 | 〇 |
2 | 運搬の最終目的地 | 〇 | |
3 | 処分又は再生の場所、所在地、方法、処理能力 | 〇 | |
4 | 最終処分の場所、所在地、方法、処理能力 | 〇 | |
5 | 委託契約の有効期間 | 〇 | 〇 |
6 | 委託者が受託者に支払う料金 | 〇 | 〇 |
7 | 産業廃棄物許可業者の事業の範囲 | 〇 | 〇 |
8 | 積替え保管する場合に、場所の所在地、保管できる廃棄物の種類、 保管上限、他の廃棄物との混合の許否等 | 〇 | |
9 | 委託する廃棄物の適正処理に必要な情報 | 〇 | 〇 |
① | 産業廃棄物の性状及び荷姿 | 〇 | 〇 |
② | 通常の保管で、腐敗・揮発等の性状変化 | 〇 | 〇 |
③ | 他の廃棄物と混合等により生ずる支障 | 〇 | 〇 |
④ | JISC0950 に規定する含有マークの表示に関する事項 | 〇 | 〇 |
⑤ | 石綿含有産業廃棄物が含まれる場合その旨 | 〇 | 〇 |
⑥ | 水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合その旨 | 〇 | 〇 |
⑦ | その他取り扱いの際に注意すべき事項 | 〇 | 〇 |
10 | 契約期間中に上記 7項目に変更があった場合の情報伝達に関する事項 | 〇 | 〇 |
11 | 委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項 | 〇 | 〇 |
12 | 委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取り扱い | 〇 | 〇 |
委託契約書のひな型について
上記の必須項目を盛り込んだ契約書のひな型がいくつかの団体や民間企業から提供されています。
その中のひとつ、東京都環境局が提供している「産業廃棄物処理委託モデル契約書」は、運搬や処分、またその両方を委託する際のそれぞれのひな型が用意されておりオススメです。
コチラからダウンロード可能です(外部ページ)
産業廃棄物処理委託モデル契約書の一例
廃棄物データシート(WDS)について
東京都環境局は「廃棄物データシート(WDS)」のひな型も提供しています。
この廃棄物データシートは廃棄物の詳しい情報を記載できる書式で、法律で定められている記載必須項目である「委託する廃棄物の適正処理に必要な情報」を提供する為の書式です。
東京都環境局のモデル契約書を使用する場合は、その中で、廃棄物の詳細情報はWDSによって提供すると記載されている為、提出は必須になります。
他の契約書のひな型やオリジナルの契約書を使用される場合は、その中に必要な情報を盛り込んでいれば、WDSを提出する必要はありません。
廃棄物データシート(WDS)の一例
まとめ
以上、ここまで建設廃棄物の委託処理に関する契約書について紹介してきました。
契約書は原則現場ごとに委託業者と締結する義務があり、元請業者としては手間ですが、適切な廃棄物処理を行う為に大切な作業のひとつです。
委託先で不適切な処理が起きないようにするためにも、都度適切な契約書を取り交わすようにしましょう。
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