建設工事の現場で出る廃棄物は、その処理方法が法律で細かく決められています。
特に産業廃棄物の処理は、運搬業者や処分業者に処理を委託するケースも多く、そうなると更にルールや基準が複雑になります。
法律に従った正しい廃棄物の処理を行えるよう、本記事では建設廃棄物の処理方法について詳しく紹介していきます。
本記事のポイント
・建設廃棄物の処理責任者は元請
・処理方法は自己処理と委託処理の2つ
・委託は許可業者にのみ個別契約により可能
建設廃棄物は誰が処理するもの?
建設工事は、発注者や元請、複数の下請けなど様々な事業者が関わります。
そのような工事の現場で日々大量に排出される廃棄物は、いったい誰が処理する事になっているのでしょうか?
これは法律により原則元請業者とされています。
その為、建設工事で出る廃棄物(建設廃棄物)は、元請業者がその排出事業者として、廃棄物を処理する責任を負います。
建設廃棄物の処理方法について
建設廃棄物は、廃棄物処理法で規定される厳格な基準に則り、元請(排出事業者)が責任を持って正しく処理しなければいけません。
その前提をもとに、元請業者は自ら廃棄物を処理(自己処理)するか、専門の処理業者に処理を委託(委託処理)するか、どちらかの方法により廃棄物を処理することになります。
自己処理
元請(排出事業者)は、自ら建設廃棄物を処分する事が出来ます。
その場合、特に廃棄物処理業に関する許可も必要ありません。
ただし、当然ですが、その際には法律に則った正しい処理方法で処分をしなければなりません。
建設廃棄物は、そのほとんどが産業廃棄物であり、その種類と量の多さから、処理業を専門としていない建設業者が全て自社で廃棄物を処理するには限界があります。
そこで、多くの元請は処理業者に処理を委託する委託処理の方法を取ります。
委託処理
元請(排出事業者)は、産業廃棄物の処理を、処理業者に委託する事が可能です。
処理業者は、運搬を行う産業廃棄物収集運搬業と、埋立処分等を行う産業廃棄物処分業に分かれます。
元請業者は、処理を業者に委託する場合、必ず運搬業もしくは処分業の許可を持っている業者に委託しなければなりません。
※無許可業者が他人の産業廃棄物を処理した場合、委託した元請も罰則対象になります
委託処理の流れ
では実態としてほとんどの元請が選択する産業廃棄物の委託処理について、その流れを紹介していきます。
①見込み廃棄物の種類や量を確認
工事でどのような種類の廃棄物がどれくらいでるのかを見積もります。
ここでの確認は、この後の処理計画の策定や委託業者の選定、実際の分別・保管の内容を決定づける非常に重要なポイントになります。
発生量の予測は、建築物の用途や構造別の発生原単位に、建築工事であれば延床面積、解体工事であれば除去面積を乗じて予測する方法があります。
②処理計画の立案
見込まれる廃棄物の内容が確認できれば、次に作業所ごとで処理計画を立案します。
処置計画では、廃棄物の発生抑制、再生利用等の減量化、また処分方法並びに分別方法などについて具体的な計画策定が求められます。
なお、この処理計画は全ての工事で計画書としての作成が義務付けられているわけではありませんが、建設リサイクル法の適用がある工事については発注者への計画書提出が義務付けられるケースや、自治体によっては大規模工事については自治体への提出が義務付けられるケースが存在します。
③処理の委託業者の選定
処理計画を立案時に、処理を委託する事業者を選定します。
産業廃棄物の処理業務は大きく運搬と処分にわけられ、それぞれ事業をする為の許可制度が設けられています。
産業廃棄物処理業の無許可業者に処理を委託した場合、依頼者も罰則の対象になりますので注意しましょう(許可業者の見分け方は後ほど詳しく紹介します)。
④委託契約書の締結
産業廃棄物の処理を委託する業者と排出事業者は、個別に委託契約書を締結しなければなりません。
運搬業者と処分業者が別の業者の場合は、それぞれの業者と個別に契約書を交わす必要があります。
契約書に記載が必要な事項も決まっており、適切な契約書の締結が求められます。
⑤廃棄物の分別・保管
実際に施工が始まり廃棄物が排出されれば、その都度処分場へ運搬するのが理想ですが、実際は一時的に現場で保管し、定期的な搬出という形になります。
その為、現場で適切に廃棄物を分別・保管する事が求められます。
特に保管に関しては法律で管理基準が定められており、元請は当然のことながら現場に出入りする下請け事業者も遵守しなければいけません。
⑥マニフェストの交付
産業廃棄物の処理を他人に依頼する場合、確実に依頼者の元で廃棄物が処理されたかを追跡する為、マニフェストの交付が義務化されています。
廃棄物を処理業者に受け渡す際、元請が処理業者に対しマニフェストを交付し、処理終了後に処理業者から廃棄終了の旨を記載した写しを返送してもらう事で、委託内容通りに廃棄物が処理された事を確認する仕組みです。
⑦処理実績の確認・報告
廃棄物の処理が完了すれば、その実績を確認し、社内で記録として残し管理します。
この実績報告は工事ごとに自治体への報告などが義務付けられているわけではありませんが、建設リサイクル法の適用工事の場合、発注者への報告が義務付けられるケースや、自治体によっては大規模工事については自治体への報告が義務付けられるケースが存在します。
また、1年を通して多量に産業廃棄物を排出する事業者は、廃棄物の減量や処理に関する計画書を年に1度自治体に提出する義務があり、この計画書作成の為に、正確な排出量を把握しておく事が必要な為、処理実績の把握および記録は確実に行いましょう。
委託する際の注意点
産業廃棄物の処理を業者に委託する際は、委託業者が許可業者であるかに細心の注意を払う必要があります。
これは、無許可業者に依頼した元請業者も罰則対象になる為です。
委託する際には、運搬業者であれば「産業廃棄物収集運搬業」、処分業者であれば「産業廃棄物処分業」の許可をそれぞれ持っている事を確認しましょう。
確認は、許可証を提示してもらう事で行えますが、その際に以下点を特に注意して確認するようにしましょう。
・業の区分
・許可期限及び条件
・取り扱える産業廃棄物の種類
・積替え保管の有無
・発生地(荷積み)と処分地(積下ろし)の自治体の許可か
特別管理産業廃棄物が出る場合
排出される産業廃棄物の中に、特別管理産業廃棄物が含まれる場合は、上記のフローに追加して、事業場(原則として作業所)ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を置く義務があります。
特別管理産業廃棄物管理責任者は、大学等の理学、薬学、工学若しくは農学の課程において衛生工学若しくは化学工学に関する科目を修めて卒業した後、2年以上廃棄物の処理に関する技術上の実務に従事した経験を有する者等、一定の資格を有する者でなければなりません。
まとめ
以上、ここまで建設廃棄物の処理方法について紹介しました。
建設廃棄物は元請業者が責任を持って処理する事が義務付けられておりますが、実態としてはそのほとんどを委託処理の形をとっています。
その為、元請業者は正しい廃棄物処理の知識を持っている事が、法律違反をしない為にも非常に重要な事になってきます。
この記事を読んだ方に人気の記事
産業廃棄物の委託処理フロー
工事受注
▼
①見込まれる廃棄物の種類や量を確認
▼
②処理計画の立案
▼
③処理の委託業者の選定
▼
④委託契約書の締結
▼
施工開始
⑤廃棄物の分別・保管
▼
⑥マニフェストの交付
▼
竣工
▼
⑦処理実績の確認・報告